本文へスキップ

「新品」のときだけ、きみが好きなわけじゃない

買ったばかりの靴は、まだ「生活の外側」にいる。

汚れていない靴底。
揃った靴ひも。
箱から出したときの形。

そこにあるのは完成した物だけれど、自分との関係は、まだほとんど始まっていない。

その靴がどんな一足になるのかは、玄関を出てから少しずつ分かってくる。

長く歩く日に選べるか。
急いでいる朝にも手が伸びるか。
合わせたいと思っていたパンツより、意外な一本の方がしっくりくるか。

購入時には説明できなかった理由で、出番が増えることがある。
反対に、気に入っているのにどうしても履かなくなることもある。

だから「買ってよかった」という言葉は、できれば一度で終わらせたくない。

最初に惹かれたところ。
実際には気がかりだったところ。
それでも残したいと思うところ。

これは矛盾したまま並んでいてもいいと思っている。

見た目は好きだけれど、長い距離には向かない。
手入れには少し手間がかかるけれど、その時間まで嫌いではない。
そういう条件が書いてある方が、物との暮らしを想像できる。

もちろん、傷や不便さを何でもかんでも「味」で片づけるつもりはない。
痛いものは痛いし、合わないものは合わない。
使い続けることだけが物を大切にする方法でもないと思っている。

それでも履きじわの入った一足を、もう一度きれいにしたくなることがあるとしたら。

そこには、買った日の高揚とは違う「好き」が芽吹いている。

BOUGHTには、その続きを残していきたい。です。

← BOUGHT 一覧に戻る